コロナに負けない!『世界一訪れたい日本のつくりかた』レビュー
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先日デービッド・アトキンソン氏の『新・観光立国論』を紹介させて頂きました。
日本再生への道筋として、イギリス人アナリストが提唱する「観光立国」は非常に興味深いものでしたね。
2020年は年始めから新型コロナウイルスの感染拡大により、各国で経済の低迷が危ぶまれています。
中でも観光業界は、宿泊・体験・輸送その全てにおいて未曾有の危機にさらされていると言えるでしょう。
そんな逆風の中でも、いや、だからこそ、アトキンソン氏の論説を信じ、今できることをしていきたいと思っています。
そんな想いのもと、『新・観光立国論』の続編とも言える『世界一訪れたい日本のつくりかた』を手に取るに至りました。
観光に縁のない方にもぜひ手に取って頂きたいと思います。日本の文化や自然といった資源を客観的に見つめ直す良いキッカケになると思いますし、広くビジネスにおいて役立つ知見も詰まっています。
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インバウンド業界に携わっている/携わりたいあなた
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観光におけるマクロ的視点を養いたいあなた
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ビジネスを広げていきたいと思うあなた
書籍概要
「日本は観光大国になり得るポテンシャルを秘めている」と確信し執筆されたのが前作『新・観光立国論』でした。
その著書がベストセラーにもなったことから、「明日の日本を観光ビジョン構想会議」など公の会議に出席する機会が増えたそうです。
ただそういった議論や視察に参加する中で、前作で記した日本の観光業の可能性と問題点をより強く感じたため、『世界一訪れたい日本のつくりかた』を執筆することになったのです。
20年以上のトップアナリストとしての経験と10年に渡る文化財保護の経験から、今日本が取るべき戦略と施策を、統計データといった科学的根拠から巧みに論じています。
問題点が浮き彫りになったと同時に、非常に説得力があり、「これなら日本は変われるかもしれない」と思えました。
著者プロフィール
元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。
目次
第1章:日本の「実力」は、こんなものじゃない
第2章:「どの国から来てもらうか」がいちばん大切
第3章:お金を使ってもらう「魅力」のつくりかた
第4章:自然こそ、日本がもつ「最強の伸び代」
第5章:「誰に・何を・どう伝えるか」をもっと考えよう
第6章:儲けの9割は「ホテル」で決まる
第7章:観光は日本を支える「基幹産業」
印象に残った内容
大事なのは観光客数ではなく観光収入
観光実績として分かりやすいものに観光客数というものがありますが、本質を考えれば観光客数というのはあまり意味のないものだと分かります。
それよりも大切なのは「いくら稼いだのか」という観光収入です。
政府は2020年に4000万人の観光客数、8兆円の観光収入を目標としています。
観光客数は目標達成に大きく近づくほどの伸びを近年記録しています。ですが観光収入の方は微増です。
日本経済にとって重視すべき指標はもちろん観光収入です。
これに関してはアトキンソン氏の本を読む前から、自分も危険視していたことで、観光収入の目標達成には程遠い現実なのです。
観光収入を増やすには、一人あたりの旅行者の単価を上げる事が必要で、それはホテルであったり体験であったり、滞在時間を伸ばすであったり様々だと思います。
それを考えればただ単に観光客数を伸ばすためだけのプロモーション戦略ではなく、単価を上げるためのあらゆる施策が必要になります。
自画自賛をするわけではないですが、少なくとも自分の提供するツアーは価格自体も安くはないですし、滞在日数を伸ばす娯楽として貢献していると思います。
宿泊施設の改革もそうですが、アクティビティの提供施設が今後増えることを願ったやみません。
スコットランドのフィッシングツーリズム
今僕が既存で行っているのはサイクリングやウォーキングといったいわばどこにでもあるようなツアーです。
ただ前々から釣りやキャンプといった需要も今後増えてくるのではないかと思っていました。
本書でもスコットランドのフライフィッシングが世界中の富裕層にウケていると書かれていましたが、日本にも鮎釣りやテンカラなど様々な釣法があります。
まだまだニッチ市場ではあると思いますが、着手が早ければ先行者利益でスコットランドのようにトップブランドを目指すことも可能だと思いました。
自然も文化も日本には活かすべき資源がたくさんありますし、アトキンソン氏が指摘するように、「もったいない」という感覚がよく分かりました。
観光を扇の要にする
これまででは考えられもしなかった産業が次々に生まれています。スポーツは今やビジネスとして世界中に広がっています。
アトキンソン氏が信じる「観光は日本再生の起爆剤」というのは大いに共感できます。そしてそのお客様が訪日外国人旅行者であることも。
近年対応改善がなされていることはアトキンソン氏も本書で述べています。文化財の産業化や街の観光案内整備など。
既存の観光事業者にとって国内の旅行者が未だにメインのクライアントであることは間違いありませんが、訪日客に対しても目を向けてほしいと思います。
そのためには、既存事業の方向性やサービスの質を見直す必要がありますが、数十年後の未来を考えれば至極当然のことのように思います。
観光という産業を一つの軸として、様々な分野に派生していってくれたらと思います。
まとめ
新型コロナウイルスの感染拡大により大変な時期だからこそ、より深く観光について考えたい、そんな想いから読みましたが、まさに『新・観光立国論』の続編・具体版といった感じで、観光立国、観光大国設立に必要な政策や考え方が盛り込まれていました。
未だに蔓延っている日本の観光における「礼賛」に対して批判的なスタンスを取り、あくまでデータという科学的根拠に基づいて読者を納得させていると感じました。
また、民間レベルでのサービス向上はもちろんのこと、国家レベルでの効果的な政策の必要性を改めて実感しました。
現在の本業はあくまで外国人旅行者向けのアクティビティ事業ですが、より国家戦略といったマクロ的な事業への興味も湧きました。
観光に携わる方はもちろんのこと、文化、スポーツといった他の分野に従事されている方にもぜひ一読して頂きたい本です。
コロナに負けるなニッポン!
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