タトゥー(刺青)入り外国人の入浴規制を今すぐ解決すべき!温泉とインバウンド
この記事は約 6 分で読めます。
年々増え続ける外国人観光客とそれに伴い拡大し続けるインバウンド市場。
たくさんの外国人の日本の良いところを知ってもらうことは日本人として嬉しいですよね。
ただ、日本のインバウンド市場にはまだまだ改善すべき点がたくさんあります。
本記事ではそのうちの一つ、タトゥー(刺青)の入った外国人の温泉施設への入浴規制について扱っていきます。
法的に規制をする必要があるのか、温泉施設側で可能な対策はあるのか詳しく見ていきましょう。
日本旅行といえば温泉
JNTO(日本政府観光局)のデータによると、およそ3割もの訪日外国人旅行者が温泉を楽しみに日本を訪れているようです。
特に中国人やオーストラリア人には日本食と共に人気のコンテンツとなっております。
海外でも温泉のある国はいくつかありますが、日本ほど多くの温泉地がある国はなかなかありませんよね。
日本人ではありますがかくいう僕も温泉は大好きです。
なんなんですかね?あのくつろぎというか贅沢感というか、自然と行きたくなってしまう場所ですね。
でも「タトゥー(刺青)お断り」といった類の看板は正直よく見かけます。
実際に止められている場面に遭遇したことはありませんが、外国人が入浴を拒否されたという話は身近に聞いたことがあります。
まず法的に入浴が禁止されているかを確認して見ましょう。
温泉施設における法律「公衆浴場法」
法律上入れ墨の有無による入浴の制限はない
日本の入浴施設や温泉施設に関するルールは「公衆浴場法」において定められています。
結論から言うと、タトゥー(刺青)をしている人の温泉入浴や浴場利用は制限されていません。
ではなぜこうも自然に「タトゥーお断り」といった風潮が日本にあるのでしょうか?
一般公衆浴場とその他の公衆浴場
公衆浴場法によると公衆浴場は、「一般公衆浴場」と「その他の公衆浴場」とに分類されます。
一般公衆浴場は「地域住民の日常生活において保健衛生上必要なものとして利用される施設」とされ、入浴料金が統制されているものです。
銭湯や老人福祉センター等の浴場などがこれにあたります。
一方、その他の公衆浴場とは健康ランドやゴルフ場などスポーツ施設に併設されるもの、エステサロンの泥ぶろなどが該当します。
「タトゥー(刺青)=暴力団関係者」の風潮がルール化
一般公衆浴場は公衆衛生上で必要な施設であると考えられています。
よって感染病にかかっている、著しく不潔であるなど、他の入浴客の健康を害する恐れがない限りは、利用者の入浴を断ることは出来ません。
一方その他の公衆浴場は公衆衛生の為の施設ではなく、完全に営利目的の施設です。
そのためタトゥー(刺青)の入った方が利用した場合、「他のお客さんに威圧的な印象を与える」「タトゥーが入った人とは一緒に入浴したくない」といった大多数の意見を無視出来ないのです。
さらに日本の場合、「タトゥー=暴力団関係者」というイメージが昔からあるので「温泉、銭湯ではタトゥーお断り」という風潮が生まれたのです。
タトゥー(刺青)がある外国人旅行者の入浴に際し留意すべきポイントと対応事例
政府の見解
上でも述べたように公衆浴場法自体には「タトゥー(刺青)の有無によって入浴を禁ずる」とした内容はありません。
むしろ2017年2月21日の定例閣議において、政府は公衆浴場法により、タトゥーを入れた人が利用の制限を受けることはないという内容の答弁書を決定しています。
とはいえ「タトゥー入りの人は入浴不可」という日本の古くからのしきたりは中々払拭されません。
そこで観光庁は実際に温泉などのサービスを提供する事業者向けにタトゥー入りの方の入浴における注意点や対応事例をまとめました。
留意点
観光庁がまとめた「タトゥー(刺青)がある外国人旅行者の入浴に際し留意すべきポイント」は以下の通り。
日本と異なり、海外の場合はタトゥーについて
- 宗教、文化、ファッション等の様々な理由で入れ墨をしている場合があること
- 利用者相互間の理解を深める必要があること
- 入れ墨があることで衛生上の支障が生じるものではないこと
を留意すべきポイントとした。
対応事例
また観光庁では実際の対応事例を次のようにまとめています。
- シール等で入れ墨部分を覆い、他の入浴者から見えないようにする
- タトゥーが手のひらサイズなど小さく、他の入浴者に威圧感を与えない場合は特別な対応を求めない
- 家族連れの入浴が少ない時間帯への入浴を促す
- 複数の風呂がある場合、浴場を仕分けてご案内する
- 貸切風呂がある施設では、貸切風呂の利用をご案内する
- 宿泊施設の場合、専用風呂のある客室等をご案内する
このように時間帯を工夫したり、風呂ごとに仕切ってしまったりと様々な対応策があります。
インバウンドで大成功している日本の温泉地
外国人観光客の温泉入浴に関してタトゥー(刺青)の有無による規制が問題になっている日本ですが、その中でも成功している温泉地はたくさんあります。
今回挙げる3つの温泉地は日本人にとっても外国人にとっても超魅力的なのでぜひ日本中の他の温泉地も参考にしてほしいと思います。
兵庫県 城崎温泉
駅は玄関、道は廊下、宿は客室、土産物屋は売店で外湯は大浴場と、町全体をひとつの「宿」として、客人を迎え入れ、もてなしています。
また、外国人向け宿泊予約サイトを行政が運営したり、英語対応スタッフや、フリーWi-Fi環境など、外国人に向けたおもてなしも充実させています。
その結果2012年から5年間で外国人観光客が40倍に増加しています。
城崎温泉のインバウンドへの取り組みについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
徳島県 大歩危祖谷温泉郷
2000年に町村の区域を超えた団体として「大歩危祖谷いってみる会」が設立されました。
パンフレットの作成や共同メニューの開発、ウォーキングイベントの開催など、様々な取り組みを行っています。
四国の山奥にもかかわらず宿泊者の1割以上が外国人で、海外マーケットへ積極的にPRを展開しているほか、外国語対応スタッフの育成や古民家の改装なども行っています。
長野県 湯田中渋温泉郷
複数の温泉を持つ特徴を活かし、温泉をより楽しめる企画を開発している温泉地です。
温泉手形や外湯めぐり、チケット制バスや周遊バスの運行、またゲートボール大会やゴルフ大会などのイベントも盛んに行われています。
温泉郷からほど近くにある地獄谷野猿公苑では、温泉に入る猿が外国人に大人気です。外国人観光客の受入れ体制も強化しています。
まとめ
いかがだったでしょうか?今回は増加するインバウンドとは裏腹にタトゥー(刺青)入りの外国人の入浴を断ってしまう理由や対策について扱ってきました。
日本に来るすべての外国人が断られているわけではありませんが、温泉を楽しみに日本を訪れてくれた外国人がタトゥーを入れているだけで温泉に入ることを止められてしまったなんて話はやっぱり悲しいです。
日本のすべての温泉施設が今すぐに考えを改めることは難しいですが、少しでも観光庁の発表した留意点や対応事例を参考にしてくれればと思います。