全世界の若者へ『20歳のときに知っておきたかったこと』レビュー
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起業と言えばシリコンバレー。あのスティーブ・ジョブズが創業したApple社など世界の名だたる企業が生まれた地です。
そんなシリコンバレーに本拠を置くスタンフォード大学で、未来の起業家たちに教鞭を取る女性の記した本をご紹介しましょう。
ティナ・シーリグ氏の『20歳のときに知っておきたかったこと』です。
タイトルからも推察できるように、若者に対してのメッセージがたくさん詰まっています。もちろん子を持つ親世代にも教育の参考になるかと思います。
- まもなく20代を迎えるあなた
- 現役バリバリな20代のあなた
- 10代20代の子供を持つあなた
書籍概要
まず簡単にこの本が書かれた背景を説明しましょう。
シーリグ氏の息子が16歳の誕生日を迎えた時、大学進学まであと2年しかないと気付き、彼女自身が社会に出た時に知っていればよかったと思うことを息子に伝えようと思ったのがキッカケです。
結果的にはスタンフォード大学のリーダーシップ・プログラムでの講演の下となり、そこでの好評も合って書籍化する運びとなったようですが、大本は母親が愛する息子へ送ったメッセージと言えるでしょう。
超一流の起業家育成講師としてアメリカで活躍し続ける著者ではありますが、日本人でも容易にイメージが出来る具体例を豊富に用いながら、要点や例から得られる教訓を的確に伝えています。
将来起業家を目指す、目指さないは抜きにして、変化の目まぐるしい現代において、まさに20歳前後の若い世代に手にとってほしい著書です。
総ページ数は231ページ、読了時間の目安は3.5時間です。
著者プロフィール
ティナ・シーリグ(Tina Seelig, 1958年 – )は、アメリカ合衆国ペンシルベニア州出身の起業家、教育者。スタンフォード大学医学部で博士号を取得した後、コンサルタント業や起業に取り組む。現在はスタンフォード大学のマネジメント・エンジニアリング学部で教鞭をとりながら、著述業、講演会、起業家支援プログラムに携わる。2011年にはNHK教育の白熱教室シリーズ(『スタンフォード白熱教室』)に登場した。
目次
第1章:スタンフォードの学生売ります
第2章:常識破りのサーカス
第3章:ビキニを着るか、さもなくば死か
第4章:財布を取り出してください
第5章:シリコンバレーの強さの秘密
第6章:絶対いやだ!工学なんて女がするもんだ
第7章:レモネードがヘリコプターに化ける
第8章:矢の周りに的を描く
第9章:これ、試験に出ますか?
第10章:実験的な作品
印象に残った内容
ニーズ把握の第一歩はギャップを見つけること
世の中に求められる商品やサービスを作る上では、現実と理想のギャップを見つけることが重要とありました。
ギャップを見つけられたら、あとはそのギャップを埋め理想に近づける商品を生み出すだけ、ということですね。
これは起業や新商品開発の上で大切な考え方で、その力を養うには日頃から身の回りの人間や社会問題にアンテナを張っておく必要があります。
地域のこと、世界のこと、広さや深さは関係なく、日々より多くの情報を取得し、それらに疑問を感じ、分析することができれば、世の中が求める理想の商品を生み出せるかもしれません。
ここから色々な世界の人間と話す、情報や知識を多く取り入れることが大切だと感じました。まさに読書か!笑
自分自身や周りの期待を裏切る
ルールや社会的通念といった基準は、意思決定を簡易にしますが、その反面足枷にもなってしまいます。
その他自分自身の持つ常識や周りの期待に関しても同じことが言えます。
ルールや常識を疑うこと、時に周りの期待を裏切ることは不安がつきまといますが、自分自身を新たな世界へと導く大きな可能性を持っています。
社会のレールという言葉がぴったりでしょうか。日本人はアメリカ人や世界の他の人種と比べて、挑戦志向ではなく、リスク回避行動を取りたがるというデータがあることはご存知の方も多いことでしょう。
もちろん日本にも若い世代を中心に「親を安心させるような人生は嫌だ」「社会のレールから抜け出したい」といった方が増えてきているのも事実です。
ただ未だに“一皮むけない”人が多いのも事実で、自分もその一人であると思います。改めて”ルールを破る””常識を疑う”といったことの重要性を感じました。
人間には2つのタイプがある
自分のやりたいことを誰かに許可されるのを待っている人間
自分自身で許可する人間
著者の経験や紹介されている現実の具体例から、誰かがチャンスを与えてくれるのを待つのではなく、自分自身でチャンスを掴みにいく方が良い結果を生むとあります。
早い者勝ちの観点からも同じことが言えるし、ここでも自分の行動や意思決定を自分自身が許可できるか、ということの重要性が読み取れます。
これは非常にうなずける内容で、自分は2つのタイプを行き来しているような気がします。常に自分自身を許可できるような人間でいたいと思いました。
得意分野を決めつけない
「自分の得意分野はこれだから、この分野のスペシャリストになろう」
一見素晴らしい意思決定のように見えますが、これは自分の可能性を狭めてしまう危険性も孕んでいます。
自分が出来ることはこれだ、と固定的なイメージを持つと、そのイメージが揺らぐようなリスクを取らなくなってしまいます。
逆に得意分野や出来ることを増やしていこうという成長志向の人間は、リスクテイクも厭わず精力的に動こうとするので、自分の可能性を広げることが出来ます。
自分もインバウンドや英語という得意分野だけにすがるのではなく、宇宙科学や医療など全く関係のないことにも興味を広げてみようかな、という気になりました。
意思決定時の情報は不完全である
何かをするかしないかの決断をする際は、その後どうなっていくか、という未来の事柄は不明瞭なので、意思決定時の情報が完璧であることはありえないのです。
ただ、だからといって根拠のない意思決定は危険です。データは集められるだけ集めるべきだし、先人の失敗例や知恵を借りることもまた重要です。
事業計画作成や自分のキャリア決定など、今までに重要な意思決定をする機会は何度もありましたが、たしかに不測の事態も経験してきました。
これから死ぬまでに決断の機会は何度もあると思うので、日々先人の知恵を蓄えることもしながら、最善の意思決定をできるよう心がけます。
まとめ
書籍自体は薄く見え、200ページほどだったので2時間位くらいで読み終わるかな、と思っていましたが、実際はその倍近くの時間を費やしていました。
紹介されている具体例がクリエイティブかつ痛快で非常に興味をそそられました!
自分が同じ立場に立った時に、同じように意思決定できるかは甚だ疑問ではありますが、どんな意思決定においても、自己責任であることを認識し、自分の思考や行動全てを許せる強い人間になりたいと思いました。
これから社会へ羽ばたこうとしている全世界の若者に向けて送られたメッセージが詰まっています。
「起業とは無縁」と割り切るのではなく、その可能性も視野に入れておく程度に考えて、一度本書を手にとってみると今後の社会人生活に大いに役立つことでしょう。