明確なビジョンなき地域おこし協力隊は失敗する?目的と活動に一貫性を持とう

09/10/2017アドバイス

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地域おこし協力隊という制度について再考する

今日は僕が現在下呂市馬瀬にいる理由そのものである「地域おこし協力隊」について考えてみたいと思います。

なかなか地域で生活をしていると、そもそもの目的とか振り返らなくなってしまうんですよね。

でもそれってかなり危険なことで、特に今の僕は一番に考えなくてはならないのです。

今一度この制度自体の目的や求められている活動、地域活性化のために必要なことについて考えていこうと思います(今回めっちゃ長いです笑)。

地域おこし協力隊の趣旨

地域おこし協力隊という制度は総務省の旗振りで始まりましたので、その総務省の資料を元に考えてみます。

第1 趣旨

 人口減少や高齢化等の進行が著しい地方において、地域力の維持・強化を図るためには、担い手となる人材の確保が特に重要な課題となっている。

 一方、生活の質や豊かさへの志向の高まりを背景として、豊かな自然環境や歴史、文化等に恵まれた地域で生活することや地域社会へ貢献することについて、いわゆる「団塊の世代」のみならず、若年層を含め、都市住民のニーズが高まっていることが指摘されるようになっている。

 人口減少や高齢化等の進行が著しい地方において、地域外の人材を積極的に誘致し、その定住・定着を図ることは、都市住民のニーズに応えながら地域力の維持・強化にも資する取組であり、有効な方策と考えられる。

 このようなことを踏まえ、総務省として、第2以下に掲げる取組(以下「地域おこし協力隊」という。)の積極的な推進を図るものである。

引用:総務省|地域おこし協力隊推進要綱

人口減少や高齢化による人手不足、地域経済維持困難という背景があっての制度だということを認識している人は多いのではないでしょうか。

ただ赤線で引きました「都市住民のニーズに応える」という点も踏まえた制度であることは地域おこし協力隊という言葉からは連想しにくいですね。

趣旨としては地域力維持強化や地域活性化だけでなく、協力隊として派遣された都市部の人間に何らかのWantがありその実現もあるということになります。

僕の場合ですとインバウンドを始めたいといったニーズですかね。

地域おこし協力隊の事業概要

お次は事業概要について。

第2 事業概要

 地方自治体が都市住民を受け入れ、地域おこし協力隊員として委嘱し、一定期間以上、農林漁業の応援、水源保全・監視活動、住民の生活支援などの各種の地域協力活動に従事してもらいながら、当該地域への定住・定着を図る取組について、地方自治体が意欲的・積極的に取り組むことができるよう、総務省として必要な支援を行う。

(1)地域おこし協力隊員

 地域おこし協力隊員は、おおむね1年以上3年以下の期間、地方自治体の委嘱を受け、地域で生活し、農林漁業の応援、水源保全・監視活動、住民の生活支援などの各種の地域協力活動に従事する者をいう。

(2)地方自治体

 地方自治体は、設置要綱等を策定した上で広報・募集等を行い、地域おこし協力隊員とする者を決定し、当該者を地域おこし協力隊員として委嘱し地域協力活動に従事させる。また、事業実施にあたっては、全国的な地域づくり推進組織、NPO法人や大学等と連携することが望ましい。

(3)総務省

 総務省は、地域おこし協力隊の推進に取り組む地方自治体に対して、別添のとおり必要な財政上の支援を行うほか、都市住民の受入れの先進事例・優良事例の調査や、これらの事例の地方自治体への情報提供等を行う。

引用:総務省|地域おこし協力隊推進要綱

協力隊員、地方自治体、総務省の3者の役割や責任範囲が書かれています。

協力隊は地域で生活しながら地域協力活動に従事し、地方自治体は協力隊員を委嘱し地域協力活動に従事させ、総務省はその地方自治体への支援を行うといったような構図ですね。

地域おこし協力隊員と地域協力活動

ちょっと長いし漢字ばっかりなので、面倒くさかったら下にスクロールしちゃってください笑

第3 対象

(1)「地域おこし協力隊員」

 この要綱における「地域おこし協力隊員」とは、以下に該当する者をいう。
 ① 地方自治体から、委嘱状の交付等による委嘱を受け、地域協力活動に従事する者であること。
 ② ①の委嘱に当たり、地方自治体が、その対象者及び従事する地域協力活動の内容等を広報誌、ホームページ等で公表していること。
 ③ 地域協力活動を行う期間は、おおむね1年以上3年以下であること。
 ④ 生活の拠点を3大都市圏をはじめとする都市地域等から過疎、山村、離島、半島等の地域に移し、住民票を移動させた者であること。したがって、同一市町村内において移動した者及び委嘱を受ける前に既に当該地域に定住・定着している者(既に住民票の移動が行われている者等)については、原則として含まないものであること。ただし、「地域おこし協力隊員」であった者(同一地域における活動2年以上、かつ解嘱1年以内)で、3大都市圏外の全ての市町村及び3大都市圏内の条件不利地域に生活の拠点を移し、住民票を移動させた者は含めることとする。

 なお、委嘱の方法、期間、名称等は、地域の実情に応じて弾力的に対応することで差し支えない。

(2)「地域協力活動」

 この要綱における「地域協力活動」とは、地域力の維持・強化に資する活動をいい、おおむね次に例示するものとするが、その具体的内容は、個々人の能力や適性及び各地域の実情に応じ、地方自治体が自主的な判断で決定するものである。

(地域協力活動の例)

  • 地域おこしの支援(地域行事やイベントの応援、伝統芸能や祭の復活、地域ブランドや地場産品の開発・販売・プロモーション、空き店舗活用など商店街活性化、都市との交流事業・教育交流事業の応援、移住者受け入れ促進、地域メディアなどを使った情報発信 等)
  • 農林水産業従事(農作業支援、耕作放棄地再生、畜産業支援 等)
  • 水源保全・監視活動(水源地の整備・清掃活動 等)
  • 環境保全活動(不法投棄パトロール、道路の清掃 等)
  • 住民の生活支援(見守りサービス、通院・買物のサポート 等)
  • その他(健康づくり支援、野生鳥獣の保護管理、有形民俗資料保存、婚活イベント開催 等)

引用:総務省|地域おこし協力隊推進要綱

事業概要にもあった通り、協力隊員は地域協力活動に従事する者となっています。

で、その地域協力活動とは何ぞやというところで後半にその例示がされています。

ただ例はあくまで例なので、つまるところ赤字の部分です。

個々人の能力や適性及び各地域の実情に応じ、地方自治体が自主的な判断で決定するものが地域協力活動の定義です。

僕の場合インバウンドということで簡単に思いつく能力としては語学力といった感じでしょう。

ちなみに住民票諸々についてはこちらの記事でも扱いました。協力隊志望者は必見です。

地域おこし協力隊に関する留意事項

最後はその他の留意事項に関してです。長い笑

第4 その他事業推進にあたっての留意事項

(1)地方自治体は、地域おこし協力隊員の活動が円滑に実施されるよう、複数人の受け入れを同時に行うとともに、地域おこし協力隊員が地域協力活動を終了した後も定住・定着できるよう地域おこし協力隊員に対する生活支援・就職支援等を同時に進めることが望ましいこと。

(2)地方自治体は、地域おこし協力隊員の意向を尊重し、関係する各機関や住民等とも必要な調整等を行ったうえ、あらかじめ地域協力活動の年間プログラムを作成し、地域協力活動の全体をコーディネートするなど、責任をもって地域おこし協力隊員を受け入れること。また、地域おこし協力隊員の活動が円滑に実施されるよう、必要な研修の実施、地域との交流の機会の確保など必要な配慮を行うこと。

(3)地域おこし協力隊は、地方自治体が自主的・主体的に取り組むものであり、総務省はその取組実績を事後的に調査のうえ財政上の支援措置を講じるものであること。したがって、国に対する事前の申請等の特段の行為を要しないものであること。

(4)地域おこし協力隊が、住民との信頼関係を築きつつ、地域協力活動に従事し、地域への定住・定着を図る取組であることにかんがみ、服務規律、活動規律の確保を十分に図る必要があること。

引用:総務省|地域おこし協力隊推進要綱

これは主に地方自治体向けに書かれています。

特に赤字部分は完全に自治体が守るべき最も重要な事項でしょう。

ニュースなど全国の協力自治体事情を聞くとこれが守られていない自治体はたくさんあるようですが…

地域協力活動の年間プログラム作成は置いておいて、少なくとも協力隊サポート職員は配置すべきというところですかね。

地域協力活動と制度の目的

さてここまで総務省の資料を元に地域おこし協力隊という制度について振り返ってきました。

ここからはその協力隊のメインの活動である地域協力活動について深く考えてみたいと思います。

総務省が例示している通り、本当にたくさんの活動があると思います。

農業なのか観光なのか地方自治体によりけりですね。同じ自治体でも分野の違う募集をしているくらいですから。

ここで考えたいのはその地域協力活動と制度の目的の関連についてです。

地域協力活動=地域力の維持・強化に資する活動

地域おこし協力隊制度の目的=地域外の人材を積極的に誘致し、その定住・定着を図ることで、 都市住民のニーズに応えつつ地域力の維持・強化を図ること

そう、地域おこし協力隊とは地域力の維持・強化のための制度であり活動が求められているということになります。

ただこの地域力の維持や強化、地域活性化という言葉の解釈が難しいと思います。

「誰の、誰による、誰のため」の地域力の維持・強化なのか

「人民の、人民による、人民のための」という言葉、日本人でもほとんどの人が聞いたことがあると思います。

そうです。1863年アメリカ合衆国第16代大統領エイブラハム・リンカーンが行ったゲティスバーグ演説において民主主義政治の原則を示した有名な言葉です。

地域おこし協力隊による地域力の維持・強化に関してもこの言葉がそっくり当てはまるのではないかと考えます。

ただし、“人民=誰"にあたる部分が不明確であることからこの解釈が難しくなるのです。

つまりこの"人民=誰"にあたる部分が「現在その地域に住んでいる人」なのか「協力隊員含め移住者など将来的にその地域に住む人」なのかで大きくその地域協力活動は異なると考えています。

そう、この地域活性化など地域力の維持・強化というのはマジックワードすぎるのです。

その主体、実行者、目的が明確でなければならないのです。願わくばそれが明文化されているべきです。

「〇〇の、〇〇による、〇〇のための」インバウンド

ではここで自らの協力隊活動に照らし合わせていきます。

僕自身の地域おこし協力隊としての募集段階そして現在も変わらない使命はインバウンドです。

詳しくはこちらの記事で書いているので気になる方はどうぞ。

けれども、ただ"インバウンド"といってもこれまたマジックワードすぎます。目的が不明確なのです。

企業活動で言うなれば、“ミッション=インバウンド"は明確だが“ビジョン=?"というような感じです。

特に他の地域協力活動と比べてインバウンドは、ビジネス色が強いのでよりそのビジョンの部分が重要になると考えています。

ここで「いやだから地域のためのインバウンドでしょ?」と思う方がいらっしゃると思います。

しかしそれはビジョンとしては不明確だと考えます。

上で述べたように"地域"と言っても色んな解釈が出来ます。現住者?移住者?協力隊?自治体?地域の組織?

「いや全部でしょう」と思われた方、それもアリです。

でもそれぞれニーズが異なるので、定めた各対象に対しての達成すべきビジョンを明確にすべきです。

現実的には、そんなことやっていたらいつまで経っても前に進みませんが笑

なので推し進める主体が「〇〇の、〇〇による、〇〇のための」インバウンドというのを絞りかつ明確にしなければなりません。

明確なビジョンなき協力隊活動は失敗する

長いですね、ここまでで5000文字を突破しました笑

これが最後のパート、かつ一番大事な点です。

地域力の維持・強化という目的のもと、地域おこし協力隊が全国で活動しています。

その中で僕は下呂市馬瀬でインバウンドという命題に基づいて活動しています。

ただその地域力の維持・強化という目的に関して「〇〇の、〇〇による、〇〇のための」まで噛み砕いた形で明文化されている地域はどれだけあるのか。

農業やインバウンドはあくまで目的達成のための手段に過ぎません

協力隊自身が達成したいこと、成し遂げたいことがあるならそれを追求する活動も全然アリです。

それが自身の定住に結びつかずとも、「〇〇の、〇〇による、〇〇のための」が明確な形でその地域の地域力の維持・強化に繋がるのであればやるべきです。

ビジョンが不明確なままであれば、たとえ自治体や協力隊員、地域の組織がいくら頑張ろうとも地域おこし協力隊としての成功は成し遂げられないでしょう。

もし地域活性化に繋がったとしても、地域おこし協力隊であった必要性はないように思います。

協力隊という制度や身分上、日々の地域協力活動や協力隊後の生活がチラついてしまいます。

しかし本当に大事なのは「〇〇の、〇〇による、〇〇のための」が明確な地域力の維持・強化というビジョンの達成のために日々活動していくことだと思います。

そのビジョンが明確であれば日々の生活の仕方や時間の使い方はよりビジョン達成のために効率的なものになるでしょう。

また、定住するしないに関わらず協力隊任期後の生き方もクリアになるはずです。

おわりに

今日は地域おこし協力隊の制度、目的などから協力隊としてあるべき姿、ビジョンについて考えました。

僕自身現状そのビジョンに関しては胸を張って明確だと言うことができない状態です。

ですので、馬瀬でのインバウンド事業と照らし合わせてしっかり考えていきます。少なくとも今月末までに。

こうやって本来の目的を振り返ったり、整理することは大切ですね。

こんなに長くなると思わなかったのが正直なところです笑

読んでくださった方によって思うところは全く違うと思うので、何か感想があればコメント頂けますと嬉しいです。